JAES Vol.44, No.9 September 内容紹介

  1. Error Correction in Audio Amplifiers

    「オーディオアンプにおける誤差訂正」
    DIMITRI DANYUK and GEORGE PIKLO : Kiev Ukraine

    オーディオアンプの誤差訂正について検討している。オーバーオールゲインに対する伝達関数や感度、あるいは安定度は誤差訂正の構成方法により異なるが、ここでは、能動型フィードバックにフィードフォワード周波数補正を組み合わせた方法について検討しており、通常のフィードバック手法との比較が述べられている。

    キーワード：audio amplifier, error correction, feedforward compensation, feedback


  2. An Alternative Algorithm for Estimating and Tracking Talker Location by Microphone Arrays

    「マイクロフォン・アレイによる話者位置の予測と追跡についてのアルゴリズム」
    MING ZHANG and M. H. ER : Nanyang Technological University, Singapore

    マイクロフォン・アレイによる主話者の位置の予測と追跡についてのアルゴリズムについての提案である。提案されるアルゴリズムは、近接している場合、多重反射のある場合、信号源の相互干渉がある場合などで、短時間処理が可能ということである。シミュレーション結果と実験結果についても合わせて述べられている。

    キーワード：microphone array, estimating and tracking, talker location, teleconference


JAES Vol.44, No.10 October 内容紹介

  1. Nonlinear System Identification for Horn Loudspeakers

    「ホーンスピーカーの非線形システム同定法」
    WOLFGANG KLIPPEL : Audio Resarch Group, University of Waterloo, Canada

    多項式システムの特別なクラスによってもモデル化できないホーンスピーカーの非線形メカニズムのパラメータを同定するための新しい方法を紹介している。刺激信号を用いた高次システム関数の部分的な測定を応用している。これにより、電気的な非線形補正フィルタが設計できるという。

    キーワード：Horn, nonlinear mechanism, steady-state exciting signal, SM systems


  2. Design and Commissioning of Sound Reinforcement Systems for the Australian Parliament - A Holistic Approach

    「オーストラリア議会の拡声システムの設計と設置 - 全体論的アプローチ」
    GLENN LEEMBRUGGEN and DAVID CONNOR : Elecoustics Pty Ltd., Australia

    オーストラリア議会の会議場の拡声器システムについての報告である。テーパー状に配置されたスピーカーシステムを採用している。最適な音響的ゲインマージンを得るためのイコライザーやループゲインの測定に新しい方法が用いられている。

    キーワード：sound reinforcement, tapered array, gain structure, acoustic gain margin


  3. Experimental Auralization of Car Audio Installations

    「カーオーディオの設置における実験的聴覚化」
    EMMANUEL GRANIER : Renault, Direction de la Recherche, France
    MENDEL KLEINER, BENGT-INGE DALENBECK AND PETER SVENSSON : Charlmers ROOM Acoustics Group, Chalmers University of Technology, Sweden

    車の中のような狭い空間の音響モデルについて述べている。従来の建築学的音響モデルに対して、低域にはバイノーラル・インパルス応答による予測を、高域には幾何学的音響モデルを採用している。このモデルにもとづいた信号処理と試聴結果についても述べられている。

    キーワード：small room acoustics, binaural impulse response, geometrical acoustics


  4. Directional Two-Tailed Test

    「指向性2テイル試聴テスト」
    LES LEVENTHAL AND CAM-LOI HUYNH : University of Manitoba, Canada

    試聴テスト方法の比較について議論している。通常の1テイルテストによる二重ブラインド試聴テストに対して、指向性2テイル試聴テストの方が良否が聞き分けやすいことが述べられている。

    キーワード：listening test, double-blind test, directional two-tailed test


JAES Vol.44, No.11 November 内容紹介

  1. The Design of Encoding Functions for Stereophonic and Polyphonic Sound Systems

    「ステレオまたは多声サウンドシステムのためのエンコード関数の設計」
    M. POLETTI : Audio SIgnal Processing Group, Industrial Research Ltd., New Zealand

    コインシデンタルマイクロホン（同軸ワンポイントステレオマイクロホン）を用いたライブ録音における方向性情報の分離方法について述べている。ステレオやサラウンドでの再生のための最適となるようなエンコード方法が紹介されている。

    キーワード：coincident microphone, ambisonic, semicircular surround, live performance


  2. Compensation for Nonlinear Distortion of Horn Loudspeakers by Digital Signal Processing

    「デジタル信号処理によるホーンスピーカーの非線形歪み補正」
    WOLFGANG KLIPPEL : Harman International Industries Inc., USA

    ホーンスピーカーのDSPによる非線形歪みの新しい補正法について述べている。静的非線形及び動的線形サブシステムを用いたこの方法は、従来の方法に比べ、より少ない計算能力とメモリで実現でき、かつ、完全な補正が行えるるという。また、このシステムによる歪み低減の結果も述べられている。

    キーワード：horn loudspeaker, nonlinear distortion, prefiltering, DSP


  3. Multichannel Signal Processing Techniques in the Reproduction of Sound

    「音声再生における多チャンネル信号処理技術」
    P. A. NELSON AND F. ORDUNA-BUSTAMANTE: Institute of Sound and Vibration Research, University of Southampton, UK
    H. HAMADA : Tokyo Denki University, Japan

    多チャンネル再生システムで用いられる逆フィルターの設計方法の一般的アプローチについて紹介している。視聴者とスピーカの位置が理想的でないときのステレオ音像を改善するための録音方法に適用できる可能性についても述べている。

    キーワード：multichannel reproduction, inverse filter matrix, stereophonic images


  4. Experiments on a System for the Synthesis of Virtual Acoustic Sources

    「仮想音響源の合成システムにおける実験」
    P. A. NELSON, F. ORDUNA-BUSTAMANTE AND D. ENGLER: Institute of Sound and Vibration Research, University of Southampton, UK
    H. HAMADA : Tokyo Denki University, Japan

    デジタル信号処理により生成された仮想的な音像源の主観的な効果の評価の実験結果について述べている。この信号処理システムでは、多くの聴衆の正面の広角度において正確に音像を定位させることができるという。

    キーワード：virtual accoustic source, inverse filter, localized images, acoustical enviroment


JAES Vol.44, No.12 December 内容紹介

  1. Co-talker Separation Using the "Cocktail Party Effect"

    「カクテルパーティ効果を用いた共通話者の分離」
    YUCHANG CAO, SRIDHA SRIDHARAN, AND MILES MOODY: Queensland University of Techonology, Australia

    人工神経網（artificial neural network: ANN)による会話分類法で制御された繰り返しフィルタリグシステムについて述べている。これは、会話を分離するためのカクテルパーティー効果をシミュレートしたもので、繰り返しWienerフィルターを改良したものだという。

    キーワード：artificial neural network, speech separation, cocktail party effect, Wiener filter


  2. An Integral Limitation upon Loudspeaker Frequency Response for a Given Enclosure Volume

    「一定のエンクロージャ体積のスピーカー周波数特性における積分限界」
    JEFFEREY HARRISON : Monash Unoversity, Australia

    スピーカーの低周波領域性能における限界を周波数重み付けされたスピーカー能率の積分の形で導いている。これは、一般に知られたスピーカー能率とカットオフ周波数とエンクロージャー体積の関係を新たに表現し直したものである。

    キーワード：loudspeaker, efficiency, cutoff frequency, enclosure volume


  3. Compatibility Matrixing of Multichannel Bit-Rate-Reduced Audio Signals

    「多チャンネル圧縮音声のマトリクスの互換性」
    WARNER R. TH. TEN KATE : Philips Research Laboratories, The netherland

    多チャンネルオーディオをマトリクスを使いダウンミックスして2チャンネルオーディオを互換性をもたせる方法について述べている。特に、MPEG-2マルチチャンネルオーディオの場合について説明されており、心理音響モデルを用いたビット圧縮でのダウンミックス時のマスキングされないノイズの除去方法が述べられている。

    キーワード：MPEG-2 audio, multichannel audio matrixing, down mix, unmasking noise


  4. Sound Reinforcement by Wavefield Synthesis: Adaptation of the Synthesis Operator to the Loudspeaker Directivity Characteristics

    「ウェーブフィールド合成による拡声：スピーカー指向特性への合成演算子の適応」
    DIEMER DE VRIES : Delft University of Technology, The Netherlands

    Rayleighの代表定理にもとづいたウェーブフィールド合成について述べられている。これは、時間と空間において自然の特性をもった音場の生成を可能にする概念であり、通常のスピーカーアレイでは得られない効果があるという。

    キーワード：wavefield synthesis, loudspeaker array, Rayleigh theorem, dipole loudspeaker